計算機実習 I

第七回 (2005年 6月 2日)

構造体、共用体、列挙型

© 2005 Martin J. Dürst 青山学院大学

先週の試験について

第二問の正解:

C:\Test> test.exe <input.txt >output.txt

課題について

C か C++ か

構造体 (struct)

• 複数のデータの組み合わせ (並び) のデータ型
• 複数の変数を組み合わせて一つの変数として使う:
  • 変数の宣言とて意義
  • 代入
  • 関数引数と戻り値 (値として渡される)
• 構造体の要素はメンバという
• 一緒には扱えない操作: 演算、入出力
• 各々のデータの間の関係がよく見える

struct の簡単な例

struct person {
    char name[40];
    int height;
    int weight;
};

struct person personA = {"myName", 170, 70 };
int bmi = personA.weight*10000 / (personA.height*person.height);

プログラミング上のデータの大切さ

• 生き残り期間:
  • ハード: 3-5 年
  • ソフト: 10 年とか
  • データ: 30 年とか
• プログラミングでデータ構造を決めるのは関数などより大切かも

typedef を使おう

• struct person より person が使いやすくて、前者は C の初期からの残り物
• struct の後の識別子は無しでも良い
  

  typedef struct {
      char name[40];
      ...
  } person;
  
  person personA, personB;
  

typedef の仕組み

• typedef ではあらゆるデータ型に新しい名前を付けられる
• プログラムが分かりやすくなることが多い
• 変数のど定義の前に typedef を書くと変数の名前を型の名前になる
• 例:
  int int32; ⇒
  typedef int int32;
int matrix[4][4]; ⇒
  typedef int matrix[4][4];

共用体 (union)

• 構文は struct と同じが、
  • struct はメンバごと場所を確保する
  • union はメンバを重ねるので同時に一個しか納まらない
• 共用体の応用
  • メモリの節約
  • 実際のビットをそのまま残すデータ変換
  • オブジェクト指向のシムレーション (特に継承)

共用体の応用例

コンパイラで字句解析から構文解析へ渡されるトーケン

typedef struct {
    ttype type; /* トーケンの種類 */
    union {
        int    ival; /* 整数用 */
        double dval; /* 浮動小数点数用 */
        char   name[40]; /* 識別子用 */
    } val;
} token;

列挙体 (enum)

• 少数の物の区別に使われる
  例: じゃんけんの手、学部・学科、銀行の口座の種類
• 名前を使うことによってプログラムは分かりやすくなる
• 列挙体は中身が整数 (int) である

例 (04C3、階段じゃんけん、の改造):

typedef enum {GUU, CHOKI, PAA} janken;
janken moveA, moveB;
...
if (moveA == PAA)
    pointA += 5;

先週の演習について: 06B1

• なぜ gets とか scanf の %s が危ないか
  • 配列は参照渡しで関数に渡される
  • 参照されたところに入力された文字が納められる
  • しかし、参照渡しは用意した場所の先頭の位置しか渡さない
  • オーバする危険性がある
• 解決策:
  • gets 等の代わりになる新しい関数を作る
  • その関数には用意した場所の長さも引数として渡す
  • その関数は安全な関数しか使わない (つまり getchar())

06B1 の変更

戻り値は数字ではなくて列挙体にする。三つの選択肢がある:

• (文字列の最後の '\0' も含めて) 一行が納まった
• 一行の文字が多かったので全ては納まれ切らなかった
• 読む物がない (関数が呼ばれたところで EOF)

演習についての補助

• typedef を積極的に使う
• C1,C3 は後回し

次回の準備

• C: ドライブに作ったプログラムを忘れずに Z: ドライブに移す
• 今日の復習
• 新訂新 C 言語入門の第 8 章 (ポインタ、pp. 203-228) をよく読む。分かるところと分からないところをよく考える。