情報数学 I
第三回: 基本概念: 集合など (2010年
10月 8日)
Martin J. Dürst
http://www.sw.it.aoyama.ac.jp/2010/Math1/lecture3.html
© 2005-10 Martin
J. Dürst 青山学院大学
今回の目次
- 集合の概念と表現
- 部分集合、べき集合、全体集合
- 集合の演算
- 集合の法則
集合の概念
(set)
- 関心・対象にしたい物事の集まり
- 条件:
- 集合に属するかどうか明確な判断が可能
- 集合に属する
2つのものが同一かどうかの判断が可能
(同一の場合に一回しか集合に属さない)
- 集合に属するものは「元」もしくは「要素」という
(element)
- 集合には大文字、元には小文字を使うのが多い
- ある元 a がある集合 B に属する
(含まれる) ことを a ∈ B (又はB
∋ a) と書く
(a is an element of set B)
- 含まない場合には a ∉ B や B
∌ aと書く
同一性について
- 集合に同一のものは一回しか属さない
- 物事には固体、種類、概念などがある
例:
- 種類の集合: {犬、猫、牛、馬、羊、山羊}
- 固体の集合: {コロ、もも、ワン、クロ、トラ}
- 集合には一貫性が不必要
例: {牛、嬉しさ、コロ、富士山}
- 集合も物事ではあるため、元になれる
例: {1, {1,2}, {{1}, {1, {1,2}}}}
集合の表現
- 外延的記法 (denotation): 元を波括弧 ({}) 内に列挙する
例: {a, b, c}, {1, 2, 3, 4}, {1, 3, 5, 7,...}
- 内包的記法 (connotation): 元になる条件で定義する
例: {n|n ∈ ℤ で n>0 かつ
n<5}
(ℤ は整数; integer)
集合の図
ベン図 (Venn diagram)
集合の演算: 和集合
(union, sum)
- 集合 A と B の和集合は A 又は
B の集合に属する元の集合
- A と B の和集合は A ∪
B と書く
- 例:
- A = {1, 2, 3, 4, 5}; B = {2, 4, 6, 8, 10}
A ∪ B = {1, 2, 3, 4, 5,
6, 8, 10}
集合の演算: 積集合
( intersection, product)
- 集合 A と B の積集合は A かつ
B の集合に属する元の集合
- A と B の積集合は A ∩
B と書く
- 例:
- A = {1, 2, 3, 4, 5}; B = {2, 4, 6, 8, 10}
A ∩ B = {2,
4}
集合の演算: 差集合
(difference set)
- 集合 A と B の差集合は A
の集合に属して、かつ B
の集合に属さない元の集合
- A と B の差集合は A - B
又は A \ B と書く
- 例:
- A = {1, 2, 3, 4, 5}; B = {2, 4, 6, 8, 10}
A - B = {1, 3,
5}
B - A = {6, 8,
10}
部分集合
- 部分集合 (subset): ある集合の元の一部からなる集合
A ⊂ B (A は B
の部分集合) 又は B ⊃
Aと書く
- 任意の集合 A において、A ⊂
A
- A ⊂ B かつ A ≠ B
の場合には A が B の真の部分集合 (proper
subset)
- 空集合 (empty set): 一つも元を含まない集合: {} 又は
∅
空集合は全ての集合の部分集合
集合の大きさ
- 有限の数の元を含む集合を有限集合 (finite set)
と言う
- 集合 A の元の数を |A| と書く
- 例:
- |{犬, 猫, 牛, 馬, 羊, 山羊}| = 6
- |{}| = 0
- |{n|nは 20 以下の素数}| = 8
- |{1, {1,2}, {{1}, {1, {1,2}}}}| = 3
ベキ集合
- ベキ集合 (power set): ある集合の全ての部分集合の集合:
P(A)
- 例:
- A = {1, 2}; P(A) = {{}, {1}, {2}, {1, 2}}
- B = {犬, 牛, 羊}; P(B) = {{}, {犬}, {牛}, {羊}, {犬, 牛}, {犬,, 羊},
{牛, 羊}, {犬, 牛, 羊}}
- P({富士山}) = {{},
{富士山}}
- P(∅) = {{}} (= {∅})
全体集合
- 議論や計算の対処がある一定の領域に限定されていることが多い
例: 整数、この授業を取っている学生
- その時、前提としている集合を全体集合
(普遍集合、universal set) という
- 全体集合を U と書くことが多い
集合の演算: 補集合
(complement, complementary set)
- 集合 A の補集合は A
に属していない元の集合
- A の補集合は Ac と書く
- 例:
- U = {1,...,10}; A = {1, 2, 3, 4, 5};
B = {2, 4, 6, 8, 10}
Ac = {6, 7, 8, 9,
10}
Bc = {1, 3, 5, 7,
9}
集合演算の法則
- ベキ等律: A ∩ A = A; A
∪ A = A
- 交換律: A ∩ B = B ∩ A;
A ∪ B = B ∪ A
- 結合律: (A ∩ B) ∩ C =
A ∩ (B ∩ C); (A ∪
B) ∪ C = A ∪ (B ∪
C)
- 分配律: (A ∪ B) ∩ C =
(A ∩ C) ∪(B ∩ C);
(A ∩ B) ∪ C = (A ∪
C) ∩ (B ∪ C)
- 吸収律: A ∩ (A ∪ B) =
A; A ∪ (A ∩ B) =
A
- 対合律: A = (Ac)c
- 排中律: A ∪ Ac = U
- 矛盾律: A ∩ Ac = {}
- ド・モルガンの法則: (A ∩ B)c
= Ac ∪ Bc;
(A ∪ B)c = Ac ∩
Bc
演算の法則
演算 (operation) に色々な法則が考えられる
演算子 (operator) と被演算子 (operand)
の種類によって成り立つか
成り立たないか
よくあるパターン (雛形) に名前が付いている:
- 交換律 (commutative law)
- 結合律 (associative law)
- 分配律 (distributive law)
など
演算の法則の例
名前: 交換律 (commutative law)
パターン (△ は「何かの演算子」): a △
b = b △ a
成り立つ具体例:
- a, b
が整数、有理数、実数、又は複素数で △ が + 又は ·
- a, b が集合で △ が ∩ 又は ∪
成り立たない例:
集合の限界
- あらゆる集合の集合を U
とし、二つの集合に分割する:
- A: 自分を元に含む集合の集合 (A =
{a|a ∈ U かつ a ∈
a})
- B: 自分を元に含まない集合の集合
(B = {b|b ∈ U かつ
b ∉ b})
- B そのものは集合の集合なので U
に属しているが、A か B
かどちらに属しているだろう?
- B ∈ A でも B ∈ B
でも矛盾が生じる
- 似た例:
その目録自体が掲載されていない図書目録の目録
今週の宿題
提出方法: プレーンテキスト (メモ帳など、拡張子が
.txt
) のファイルを作って、Moodle で 10月14日
(木曜日) 22:00 までに提出。
- 自分で四個の元の集合を作る。他人と同様なものを使うと減点される。
- 1. のベキ集合を作る
- 元の数がゼロ個から六個までの集合のベキ集合の大きさの表を作る。例:
|A| |P(A)|
0 ?
1 ?
... ?
- ある集合の大きさとそのベキ集合の大きさの関係を式で表し、その式の根拠について簡単に説明する。
- ゼロ個から五個の元の集合の同じ大きさの部分集合の数を数えて表にまとめる。例:
|A| n |{B|B⊂Aかつ|B|=n}|
... ... ...
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