データ構造とアルゴリズム
第二回 (2009年10月
2日)
アルゴリズムの表現と評価
http://www.sw.it.aoyama.ac.jp/2009/DA/lecture2.html
Martin J. Dürst
© 2008-09 Martin
J. Dürst 青山学院大学
目次
- 前回のまとめ・宿題
- アルゴリズムの表現方法
- プログラム言語 Ruby
- アルゴリズムの評価
前回のまとめ
- 授業の位置づけと進め方
- アルゴリズムとデータ構造の魅力
- データ構造の概要 (例: 連結リスト)
- アルゴリズムの概要 (例: 線形探索、2分探索)
宿題: 膨大なデータ
提出: 来週の木曜日 (10月1日) 19時00分締切、O 棟
529号室の前に提出
- 東京証券取引所の第一部の取引で、一株式会社の株が営業時間内に平均で5分に一回売買されていると想定して、合計で年間に何項目ぐらいのデータが集まるのかを、想定の根拠も書きながら計算しなさい。
- Google (又は明記の上で他のサーチエンジン)
が対応しているウェブページの数と平均のページあたりのリンク数を調べ、おおよその合計のリンク数を計算しなさい。
- 問題 1 や 2
の結果よりも大きくて実際に存在しうるデータ項目の量を考え、説明しなさい
(他人と同じものの場合には減点の対象となる)。
Ruby のダウンロード
Ruby
One-Click Installer
(http://rubyforge.org/frs/download.php/43428/ruby186-27_rc1.exe) 又は
cygwin で ruby を追加インストール
アルゴリズムの表現方法
問題: アルゴリズムをどうやって表現するか
- 文書
- 図
- 疑似コード (pseudocode)
- プログラム言語
文書
利点:
欠点:
- 文書の曖昧さ
- 正確な表現の限界
- 構造が不明
- 自然言語に依存
図
例: 流れ図など
利点:
欠点:
- 作成の手間
- データ交換の困難
- 構造化プログラミングとの隔たり
疑似コード
利点:
- 自然言語とプログラムの中間
- アルゴリズムの本質に注目可能
- 構造化プログラミングと連結
欠点:
プログラム言語
利点:
欠点:
- 種類が多い
- アルゴリズムの本質と違う
- 必要以上に細かい
Ruby プログラム言語
- 日本発 (まつもと ゆきひろが 1993 年から開発)
- 2000年から欧米でも人気を集める
- 2004年から Ruby on Rails
で更に注目
- 完全なオブジェクト指向
- 手軽なスクリプト言語
- 初心者にやさしいが、上級者も大満足
- 卒論などで使用、実装に貢献 (国際化)
Ruby のインストール
アルゴリズム表現のための Ruby
- 簡潔な記法
- 変数の宣言が不要
- 型の互換性はメソッドで決まる (いわゆる duck
typing)
- 「動く疑似コード」
- プロファイラなど環境の充実
最初の Ruby の例
線形探索と二分探索: 2search.rb
実行: コマンドプロンプトで ruby 2search.rb
Ruby の記法の基本
- 行末に
;
(セミコロン) が不要
- メソッド (関数) 呼び出しで一部
()
が不要
- メソッド (関数) の定義は
def
で
class
/def
/if
/while
/do
などに必ず end
が必要
アルゴリズムの評価
- 実行時間 (計算量)
- メモリ使用量
- 実装のしやすさ
評価のときに必要な情報:
アルゴリズム同士の計算量の比較
- 実行時間の計測
- ハードウェアによって結果が違う
- 実行するたびに結果が少し違う
- 計算のステップの数え上げ・計算
(ステップ:
一定時間で計算可能な部分、例えば演算、代入、比較など)
- 実装によってステップの数が違う
- ステップの数え方は色々ある
- 入力項目の数や種類によってステップ数が違う
⇒ 明確な基準が必要
漸近的な増加の例
(asymptotic growth)
ステップの数
n (データの個数) |
1 |
10 |
100 |
1,000 |
10,000 |
100,000 |
1,000,000 |
線形探索 |
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2分探索 |
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ステップの数を式で表すとどうなる
データの個数が多くなると式のどの項が重くなる
漸近的な増加の考え方
- アルゴリズムの計算量は入力項目の数にどのように依存
- 依存を関数で表す: 計算量 =
f(入力項目数)
- 関数の比較に使う原則:
- 入力項目数が少ないときの差を無視
- 一定時間の佐は無視 (例えば初期化用)
- 定数倍の佐を無視 (ハードの進化)
漸近記号: O の定義
("big Oh" notation)
- ある関数 f(n)
(例: 線形探索のステップの数)
- の漸近的上界 (asymtotic upper bound) を表す
- もう一つの関数 g (n) があるときに
例: g (n) = n
- f (n) = O(g (n))
と書く
- この条件として、
- 全ての n > n0 に対して 0
≤ f (n) ≤ cg
(n) となる
- 正の定数 n0 と c
が存在する
まとめ
- アルゴリズムの表現方法は様々
- この授業には主に Ruby を使う
- アルゴリズムの評価の中心は計算量の漸近的な増加
- 漸近的な増加の上界は O 記法で表す