情報と社会
第四回: 標準化とオープンソース
Martin J. Dürst
duerst@it.aoyama.ac.jp
O 棟 529号室
テュールスト マーティン
ヤコブ
http://www.sw.it.aoyama.ac.jp/2013/InfoSociety/lecture3.html
© 2005-13 Martin
J. Dürst 青山学院大学
今週の目的
- 標準化について学ぶ
- オープンソースについて学ぶ
- 標準化とオープンソースの関係について学ぶ
個人的背景
第一部: オープンソース
(Open Source Software, Open Source)
簡単な定義:
ソースコードがただで入手、変更も可能なソフトウェア
例: Linux, Darwin などの
OS、Ruby
など様々なプログラム言語、Apache Web Server、Mozilla Web Browser など
反例: Microsoft, Apple, Adobe の多くの製品
オープンソースの歴史
(Unesco
Free Software Portal 参照)
オープンソースの種類
- オープンソースではない:
- シェアウェア等: 低価格だが、無料ではない
- フリーウェア: 無料だが、ソースは非公開
- ソースが公開されたが、使用、変更が制限されているもの
(スクリプトなど)
- オープンソースの主な流れ:
(他ライセンス)
オープンソースの背景
なぜオープンソースがあるが、例えばオープン自動車が
(殆ど) ないのか ?
- ソフトウェアの物理的なコピーはほぼ無料
- インターネットで物理的な距離と関係なく配信・協力可能
- ツールによって遠隔開発のサポート:
- ソフトウェアの様々な形に対応可能
- ユーザの多様な要求に対応可能
オープンソースの作成・公開の動機
- 個人、大学など:
- 商品化は大変、オープンソース化は簡単
- 少しのお金より名誉が嬉しい
- 他人からのバグフィックスなどを期待
- 改善、拡張はしたいが商品にできない
- 会社お越しにオープンソース利用
- 企業:
- ソフトウェアではなく、サービスで勝負
- 企業の共同開発や一般人の協力でコストの削減
- 他の企業と違う作戦
- オープンソースによる市場の拡大
オープンソースの使用の動機
- コストの低下
- 変更はいつでも可能
- 内容のチェックが可能
- 選択肢の拡大
オープンソースに必要な注意点
作成者側も利用者側も注意点が類似
- 利用に合ったライセンスの有無
- 提供されたコードが問題無しか
(第三者のコードを提供されたら困る)
- 特許の侵害の有無
(Van Lindberg, Intellectual Property and Open Source - A Practical
Guide to Protecting Code, O'Reilly, 2008)
オープンソースの詳細
- 単純な定義では色々な問題が起こりうる
- Open Source Initiative
による定義
(日本語):
- 再配布が自由
- ソースがほぼただで見える
- 派生が可能
- 完全性の保証が可能
- 差別の禁止:
個人やグループに対して、利用分野に対して
- 追加ライセンス契約、特定商品との結びつき、他のソフトウェアの制約の禁止
第二部: 標準化
(標準: standard; 標準化: standardization)
標準は、基本的なもの (秒、メートル等)
をはじめ、生活において大切な役割を果たしている
例: トイレットペーパに書いてあった文書:
「幅が114ミリのトイレットペーパーで、日本工業規格(JIS規格)に準じた製品サイズ(幅=114ミリ:直径=120ミリ以下)ですので、一般的なホルダーにも使用できます。」
情報テクノロジーにおいての標準の大切さ
- データの長期保存
- 通信でのやり取り
- 大量化によるコスト削減
一企業が作った商品も標準として宣伝されていることがあるが、標準とは言い難い
標準作成機関: 標準化団体
標準化団体の評価
標準化団体が様々存在する中で、評価が大切
標準の評価
- 必要な機能が揃っている
- 無駄な機能が少ない
- 普及度、普及の見込み
- 誤りが少ない
- 正誤表の整備
- 拡張性が高い
- 関連規格との整合性
- 分かりやすさ
- オープン標準か
標準化のプロセス
- アイディア、提案、標準団体への提供 (submission)
- 委員会の設置、議論
- 文書化、草案公開、意見募集・投票
- 正式決定、発表
- 実装 (もっと前から行った方が良い場合が多い)
- 普及
- 製品の認証 (certification)
- 正誤表、格上げ、見直し、拡張・第二版など
第三部: 標準化とオープンソース
- 標準はオープンなのかどうか
- オープンソースに標準が有利
オープン標準
(Open
Standards と Business
Case for Open Standards 参照)
- だれでも読める、誰でも実装できる
- ユーザの選択肢を最大限に活かす
(特定のメーカ、製品に制限しない)
- 実装は無料で可能
(必要不可欠な特許やライセンス料などがない)
- 実装や利用者の差別がない
- 実装、利用は拡張や部分的で可能
- 乗っ取り防止
標準のオープンソースへの影響
- 面識が殆どない多数のプログラマーによる実装は標準によって目的ははっきりされる
(標準がオープンソースの仕様書)
- 典型例: Linux の開発
- Unix:
会社によって開発された人気 OS
- Posix: Unix の
API の標準化
- Linux: Posix に準拠の実装
(内部は Unix と違う)
オープンソースの標準化への影響
- 早い段階での実装・検証・テスト
- 普及のきっかけ
- 複数の実装の保証
レポート: 別紙参照
提出: 来週の火曜日 (2013年10月15日) 19:00 時 (必着) O棟
5階の529号室前の箱に投稿
参考文献
- Producing Open Source Software: How to Run a Successful Free
Software Project, Karl Fogel, O'Reilly, 2006.
- Innovation Happens Elswhere: Open Source as a Business
Strategy, Ron Goldman and Richard P. Gabriel, Morgan Kaufmann,
2005.
- Intellectual Property and Open Source: A Practical Guide to
Protecting Code, Van Lindberg, O'Reilly, 2008.
- Open Source Licencing: Software Freedom and Intellectual Property
Law, Lawrence Rosen, Prentice Hall, 2005.
- Free Software, Free Society: selected essays of Richard M.
Stallman, Joshua Gay, Ed., GNU Press, 2002.